研究内容

情報工学科

コンピュータコース
「ナカミ」を学ぶ

ハードウェアとソフトウェアの基礎を学び、めまぐるしく変化する 情報化社会の中で即戦力として活躍するための勉強をします。

パスワード照合回路をツールを用いて設計している様子

コンピュータはハードウェアと呼ばれるものとソフトウェアと呼ばれるものから作られています。ハードウェアとはコンピュータを構成する回路などを指します。このハードウェアが高速に動作することで人が計算すると何年もかかってしまう計算を一瞬で計算することができます。一方、ソフトウェアはハードウェアに対して指示を与える指令書です。このソフトウェアが賢くなることで、高い計算能力を持つハードウェアを効率的に使うことができます。これらのハードウェアとソフトウェアの両方がそろって、現在のような高度な情報化社会が実現できています。コンピュータコースではコンピュータを構成するハードウェアとソフトウェアについて深く勉強します。

研究紹介

エンジン動作を速く精確にシミュレート

自動車の周りの空気の動きを
シミュレーションしている様子

自動車やそのエンジンの開発では、今日では主にコンピュータ・シミュレーションが行われます。昔は実際に自動車を試作しテストすることで、改良を繰り返していたのですが、その場合よりずっと費用を抑えて短期間でできるからです。しかしながら、そのためのシミュレーションは、たとえコンピュータであっても、上手にやらないと時間がかかったり多くの誤差が生じたりします。例えば、1秒間のエンジンの動作を一般的なパソコンでシミュレーションすると、2000秒以上かかることがあります。私たちの研究では、その1秒間の様子を10秒以下でシミュレーションするためのハードウェアとソフトウェアの研究をしています。

ネットワークコース
「つなぐ」を学ぶ

コンピュータ同士をつなぐ技術について学び、ユビキタスネットワークなど、最新のネットワークに対応するための勉強をします。

スマートフォンや車など移動するコンピュータ間の
ネットワーク接続が変化する様子を可視化

現在のコンピュータは単独で使われることはほとんどなく、ネットワークを通じてお互いつながっています。例えば、自動車の中には数百個以上のコンピュータが搭載されていますが、それらはネットワークを通じて接続されていて、お互い必要な情報を交換することで自動車の運転を快適にしています。このコンピュータをつなぐ技術は元々は線と線を直接つなぐ有線方式が主流でしたが、現在では電波を使ってつなぐ無線方式も当たり前になっています。ネットワークコースではこのコンピュータとコンピュータをつなぐ技術について深く勉強します。

研究紹介

ネットワークにつながる自動車の安全を確保

車内ネットワークと外部との
通信車内ネットワークの実験環境

自動車に関する研究としては自動運転が有名ですが、自動運転は、エンジンや前方の様子などの情報を取得するセンサーが車内のネットワークを通じて集められることで実現されています。このように、いろいろなモノがネットワークにつながることで便利になる反面、遠隔からネットワークを経由して自動運転の車が乗っ取られるようなリスクも増えてきます。そこでネットワーク通信の暗号化や信頼できる情報のみ取得する認証の仕組みを確立することで、安全・安心な社会の実現に向けて研究や実験を行っています。

コミュニケーション基盤コース
「伝える」を学ぶ

価値の高い情報を効率的に伝える技術について学び、さまざまなモノがつながる情報化社会に対応するための勉強をします。

ネットワークを介して、遠隔会議をしている様子

インターネットの登場によって「コミュニケーションの高度化」が始まりました。例えば、それまでは人と人が文章でやり取りするには手紙を送る必要がありましたが、インターネットによってメールという形で一瞬で文章を送れるようになりました。現在でも、このコミュニケーションの高度化は進んでおり、現在のインターネットにはコンピュータだけでなく、センサーや冷蔵庫など、ありとあらゆるモノがインターネットでつながれた社会になっています。このような社会では「何を」伝えるのかが大事になります。コミュニケーション基盤コースでは、ネットワークを通じて伝える技術について深く勉強します。

研究紹介

どこでもつながるネットワーク

移動中でも動画をスムーズに再生

人のつながりのみならず、身の回りのすべてのものがつながるのが前提のインターネット。インターネットでは情報を小さな単位(パケット)に分割して送るのですが、家、移動中、学校や職場など使うネットワークが変わるとそのたびにパケットが少しずつ消失し、通信が切れてしまいます。つまり、移動中に動画を再生していると、動画の再生が止まったりしてしまいます。そこで、使うネットワークが変化しても一瞬たりともつながりが切れず、快適・安全に通信する方法を研究しています。

知能工学科

知能ソフトウェアコース
知能をつくる

知能ソフトウェアコースでは、コンピュータを鍛えてどんどん賢くするための機械学習や、私たちの勉強やトレーニングを楽しく効果的なものにするための学習工学などについて学ぶことができます。

人間の知的能力をコンピュータで実現するため、人間の脳に対応する知識・思考・学習などに着目した知能情報システム技術の教育研究を行っています。例えば、インターネットで買い物をすると他のお薦め商品を紹介してくれるようなシステムでは、上手に推薦するために、過去の膨大な販売履歴から法則性を見つけ出すビッグデータ解析技術が用いられています。このように社会の中の非常に多くのデータから重要な知識や規則を抽出する、問題解決のためのさまざまな解決方法の中から効率的に適切な解を見つけ出す、コンピュータ自身が自分で問題解決のための知識を獲得する、人間の持っている感覚や経験をコンピュータで実現して社会に役立つ有用な規則を発見することなどを対象としています。そのため、これらの知識情報処理に必要な人工知能、データマイニング、機械学習、知的情報検索エンジン、エージェント、発見的探索などを学びます。

研究紹介

VR/AR技術を用いた先進的な学習支援システム

VRやARの技術を活用して仮想空間の中で能動的に学習活動が行えるシステム開発を研究しています。学習者がいつでもどこでも楽しく安全に化学の実験をしたり、その他の科目のスキル学習を自発的、能動的に行えたりできることを目指しています。

知能メディアコース
コンピュータに「五感」を

知能メディアコースでは、画像や話し言葉・書き言葉の認識・理解技術のほか、リアルで魅力的な映像を自由に作り出すコンピュータグラフィックス技術について学ぶことができます。

前の車にぶつかりそうになったら自動的にブレーキをかけてくれる自動車が増え、いよいよ自動運転車の実現も近づいています。これには私たちの代わりに歩行者や周りの車をしっかり見てくれる「機械の目」が必要です。人間の知的能力の中でも人間の目や耳などに対応する人問の感覚や知覚、人間とコンピュータ間のコミュニケーションなどに着目した知能情報システム技術の教育研究を行っています。具体的には、画像、映像、幾何データ、音声、文書などのメディア情報処理を中心とします。例えば、画像や映像から物体を抽出・計測する、実際の映像と違和感のない人工的な映像を作り出す、人間とコンピュータが自然な言語で会話することなどを対象としています。そのため、これらのメディア情報処理技術に必要な画像情報処理、コンピュータグラフィックス、自然言語処理などを学びます。

研究紹介

CGで世界を豊かにする技術、 AR(拡張現実感)

原爆ドームにスマートフォンのカメラを向けると、画面の中に被爆前の建物がCG(コンピュータグラフィックス)により浮かび上がるアプリを開発しています。このように、CGを用いて現実世界を豊かにする技術をAR(拡張現実感)といいます。昔の建物が本当にその場によみがえったように見せるには、高精細な映像を作り出すCG技術が必要になります。さらに、カメラの向きが変化しても現在の原爆ドームとCGがずれないようにするために、カメラに写った画像を高速に処理し、画像の中のドームの位置を求める画像認識技術が用いられます。

知能サイエンスコース
コンピュータの賢さを支える

知能サイエンスコースでは、ぴったり同じでなくとも似たものを見つけ出すパターン認識技術、動物の群れから発想された計算法、さらにその基礎となる統計学や微分方程式などの数学を学ぶことができます。

コンピュータは正確に計算するのは得意ですが、あいまいな判断や動物のように動的に変化する行動は不得意だと思っていませんか?このような人間の知的能力を理解し実現するために必要となる数理モデル、解析モデル、アルゴリズムなどに着目した知能情報処理に関する基礎技術の教育研究を行っています。例えば、アリは個々は単純でも集団になると高度な仕事ができます。このような動物の群れから発想された計算法や生物進化のモデルを理解し知能情報システムの機能や性能を最適化するために応用すること、データを解析し有用な知識を抽出するためのアルゴリズムを考案すること、解読しにくい暗号化や効率の高い符号化のための数学的な基礎を学び安全で効率的な通信に応用すること、渡り鳥の影響と病原体の進化を考慮した感染症のシミュレーションモデルを構築して感染予防のために利用することなどを対象としています。そのため、これらの知能情報処理に必要な数理モデル化、最適化アルゴリズム、統計的情報処理、確率的情報処理、シミュレーションなどを学びます。

研究紹介

自分の好みが発見できる「対話型進化計算」

人には好みがあり、好きな絵、音楽、配色などは人それぞれです。コンピュータと対話しながら自分の好みに合うものを探すのが「対話型進化計算」です。例えば、スーツ・シャツ・ズボンの好みのカラーコーディネートを決定できます。まずコンピュータが複数の候補を表示します。人はそれらを評価し好みをコンピュータに伝えます。コンピュータは生物進化のメカニズムにより評価が良いものを組み合わせて新しいコーディネートを生成し表示します。人とコンピュータが協力し、評価と進化を繰り返すことにより好みのものを発見できます。

システム工学科

人間・ロボット共生コース
人間・コンピュータ・情報システムの調和を図り人間・ロボット共生社会を実現

人間が安全・安心・快適・便利に生活するための社会システムの実現を目指し、今後ますます重要となるロボットを開発するためのシステム化技術ならびに人間とロボットが共生する社会を実現するためのさまざまな要素技術を広く教育・研究します。

深刻な少子高齢化社会を迎える我が国では、労働者人口の激減や高齢者支援に対応するため、人間社会のあらゆる場面でロボットが活躍する時代がもうすぐ到来します。本コースではこのような「人間・ロボット共生社会」の到来を念頭に、家庭・介護福祉施設・病院・オフィス・工場等で活躍するさまざまなロボットを開発するためのシステム化技術と、それらの基礎学問であるメカトロニクス・制御工学・ロボティクス・プログラミング・数理科学等に関する教育・研究を行います。ロボットを教材にソフトとハードの両方を修得することができ、自動車・家電・機械・IT・ネットワーク機器等のメーカーをはじめ、さまざまな情報技術業界で即戦力として活躍可能なエンジニアを育てます。

研究紹介

実世界クリッカー

体の不自由な被介護者が周りの実物体操作に関する意思を簡単かつ正確に介護支援ロボットに伝達するための介護支援システムです。実世界にある物体を、パソコン内のアイコンと同様に、クリックやドラッグ&ドロップすることでロボットに簡単かつ正確に指示を出すことができます。

インタフェースデザインコース
人間・コンピュータ・情報システムの調和を図り人に優しいインタフェースをデザインする

技術的に高度化し続ける現代社会において人が快適に機械と共存するためのさまざまな形態の専門分野で、インタフェースデザインの方法論を確立し、具現化するためのさまざまな技術を広く教育・研究します。

眼球運動測定装置世の中に無数に溢れる機械や情報機器は誰でも使えるほど優しい設計にはなっていません。本コースでは、人間・機械・コンピュータを有機的に結び付けることで、「いつでも、どこでも、だれでも」直感的に使うことができるような優しいインタフェースの実現を目指し、それに必要なデザイン技術を学びます。特に、障がい者・弱者・高齢者支援、環境(自動車など)への応用を狙い、ヒューマンインタフェース・人間工学・音響工学・リアルタイムシステム・セキュリティ等の基礎技術を修得します。それらを基に、リアルな音質に迫る人工的音響空間のデザイン、直感的で効率的なコンピュータ操作インタフェースデザイン、情報機械を効率的に動かすためのプログラムデザイン等の研究を進める中で、技術とデザインの両者を理解する骨太な人材を育成します。

研究紹介

電力線通信(PLC)

スマートグリッドは情報通信技術(ICT)を活用した次世代の送電線網であり、電力線通信(PLC)はそれを支える通信方式の1つです。電力線通信では既存の電力線を通信路として使用するため、導入コストが極めて低いという利点があります。ところが、電化製品の稼働状況により通信路特性が変動するため、高効率な通信は困難です。本研究では家電モニタリング機能を利用することで、安定かつ高効率な電力線通信の実現を目指しています。

システムデザインコース
人間・コンピュータ・情報システムの調和を図りシステムの基礎をデザインする

人間や機械と共生する複雑な情報システムの構築のために必要な数学的概念、数理モデル、量子情報、およびそれらに基づいたシステム設計のためのさまざまな方法論を広く教育・研究します。

人間社会においてロボットやAIが活躍する時代が到来し、人に優しいインターフェースの実現のための基盤となる知識、技術の修得が不可欠となってきています。本コースでは、このように変貌する人間社会に対応し、人間社会を豊かにする知識、技術を学びます。特に、コンピュータ、情報セキュリティ、システム最適化への応用を意識した数学理論、および量子論の概念や量子計測技術を活用して、より豊富な情報システムを構築するために必要な量子情報理論等の基礎知識を修得します。さらに、これらの応用として、組込みシステムとそのソフトウェアの信頼性向上技術や最適設計手法、および半導体デバイスへの応用を修得します。情報システムの基礎理論からソフトウェア等の研究・開発に携わることができる人材を育成します。

研究紹介

ランダムテレグラフノイズの測定

RTNを測定するためにセットアップ中のマニュアルプローバ

ランダムテレグラフノイズ(Random Telegraph Noise:以下RTNと記す)とは、トランジスタの微細化により、トランジスタの動作電流が不規則に揺らぐ現象である。RTNはCMOSイメージセンサやフラッシュメモリなど、様々なデバイスにおける信頼性に影響を及ぼすことが懸念されている。本研究室では、1fAまで測定できるマニュアルプローバを用い、様々な条件でRTNの自動測定を行い、RTNの解析を行っている。

医用情報科学科

医療の未来を情報科学で切り開く

「バイオ情報学」「医用画像工学」「医用ロボット」「脳情報科学」「医用情報通信」の5つの研究室で、医用情報科学、生体情報科学に関する最先端の研究を行っています。

研究室紹介

バイオ情報学

計算と実験の両方のアプローチで、情報科学と生物学の学際・融合領域の教育・研究を行っています。タンパク質、酵素などの分子レベル、微生物などの細胞レベル、植物やヒトなどの個体レベルの広い範囲の生物を対象に、生物の持つさまざまな能力を利用し、生命現象の解明と人間生活への利用を目的とした研究開発を目指しています。

医用画像工学

X線CT、MRIなどの医用画像により、生体の形や動き、その個体差、疾患による変化を捉え、医療や医学をサポートする技術の研究を行っています。解剖学的知識などの計算機内での数理表現に基づく医師と同等以上の観察眼や知能、学習能力を持つ機械の実現、および基礎医学に役立つ技術・知見の創出を目指しています。

医用ロボット

機械・電気電子・情報の融合を図り、かつその出口として医療を見据えることで、これまでにない新たな医療・福祉システムの実現を目指しています。具体的には、マイクロ・メカトロニクス技術を用いた超小型医療デバイス、無痛薬剤投与デバイス、高齢者見守り支援システム、ウエアラブルデバイス等の創成に挑戦しています。

脳情報科学

先進的な脳機能計測解析技術を開発し、それを医療・福祉・アミューズメント・脳科学等の分野に応用展開することを目指します。脳活動に随伴する光や電磁気などの物理現象を斬新な手法で捉え脳信号を高精細で可視化する技術や脳神経系と外部機器とのインタフェースにより身体機能の拡張やアシストを実現する技術を開発します。

医用情報通信

情報通信技術と医療・医学の融合による新たな医療・医学ヘルスケア技術による社会の創生を目指します。具体的にはBody Area Networkを用いた医療・ヘルスケアネットワークシステム、生体センサシステムによる医療・ヘルスケアシステム、多機能ウエアラブルバイタルセンサとウエアラブルマルチ伝送システム等の実現を目指します。

 

ユニークな研究

宇宙から来る粒子の観測

情報工学科 コミュニケーション基盤コース
センサシステム研究室

教授 田中 公一

宇宙からは可視光だけでなく、陽子、電子、ガンマ線とさまざまな目に見えない粒子が地球に飛び込んで来ます。これらは宇宙からの情報を伝え、これを読み解くことによって、超新星、ガンマ線天体など魅力溢れる天体からやってきているのかもしれないと思いを馳せます。さらに、太陽活動や地球近傍での磁場の理解が深まり、社会インフラや情報通信などに悪影響を及ぼす現象の予測にも役立ちます。
このような粒子を人工衛星で測定する方法のほかに、粒子が降った影響を地上で観測する装置が世界各地にあります。その一つにインド南部のウーティ市に日本とインドの国際共同研究施設であるGRAPES-3があります。この地での観測の利点は、赤道に近く北天と南天の両方を観測できること、より宇宙に近い2200 mの高地にあることです。これまで太陽フレアによって起こるフォーブッシュ減少などを観測しています。
本研究室では2012年から参加をし、大学院生もインドに長期滞在して装置の維持と粒子の観測や大量データの解析に従事しています。

コンピュータシミュレーションを使ってタンパク質のはたらくしくみを明らかにする

医用情報科学科 バイオ情報学研究室
教授 鷹野 優

タンパク質は生命活動に必要なはたらきをする生体分子です。例えば、酵素とよばれるタンパク質は温和な条件で生命維持に欠かせない生化学反応を助けます。もし酵素無しで同じ反応を行おうとすると、高温・高圧などの非常に危険な条件が必要となります。また、免疫ではたらく抗体というタンパク質は非常に高精度に病原体の出す物質を見分けることができます。
このように、タンパク質はとても優れたはたらきをする分子です。そのはたらくしくみを理解するためには、「はたらく瞬間の姿」を見ることが重要になります。コンピュータシミュレーションには、現実に確かめることが困難な「はたらく瞬間の姿」を理論的に追跡し、見ることができるという他にない利点があります。そこで、私たちはコンピュータシミュレーションを用いて、「タンパク質のはたらく瞬間の姿」を見ることで、そのはたらくしくみを明らかにしようとしています。また、そのしくみを利用した新しいタンパク質や薬剤の開発を目指しています。